大阪地方裁判所 昭和24年(ワ)1103号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
(事実)
原告の主張によれば、被告等五名及び訴外Kは自轉車部分品の製造を目的とする組合を設立し、はじめ商号を八尾製作所と称していたが、後にこれを旭サドル工業株式会社と改称し、組合決議をもつて業務執行社員をKと定めた。被告等は株式会社なる名称を使用していたが、その実体は会社ではなく、従つて商業登記も存在しない。原告は右組合から旭サドル工業株式会社取締役社長K振出の約束手形の交付を受けたので満期日に支拂場所である原告宅で右手形の支拂を待つたが、被告等は支拂のため來宅しなかつたと主張し、約束手形の振出人欄に表示せられていない被告等に対して手形金二十万円及びこれに対する満期日の翌日以降完済まで年六分の損害金を訴求する。
被告甲は、原告の主張する手形授受は甲が右の事業から脱退した後のことであるから本件債務には全く関係がないと抗爭し、その他の被告四名は、Kが原告主張の日にその主張するような手形を振出したことは知らないし、仮にそのような手形を振出したとしても実在しない会社が振出したもので手形としての効力がなく、原告はこのことを知り、仮に知らないとしても重大な過失によつて知らないのだから、右手形上の権利を取得するものではない。なお右振出について対價関係も存在しないものである、と抗爭した。
(判斷)
原告一部勝訴。
裁判所は被告甲に対する請求については、被告等五名及び訴外Kが民法上の組合を以て共同事業を行うものと断じた後、原告が右組合に対して手形債権を取得したと主張する昭和二十三年十一月三十日当時、被告甲は既に右組合を脱退して組合員ではなかつたことを認めて、当時同被告が組合員であつたことを前提とする原告の請求を排斥するのであるが、被告乙丙丁戊に対する請求については、同被告等が右組合を結成し、Kを業務執行者として八尾製作所と称し、自轉車部分品の製造を目的とする旭サドル工業株式会社を設立する計画であつたこと、Kは右組合を代表して原告から合計二十万円を借受け右債務支拂のために本件手形を原告宛に振出交付し、振出人欄にはすでに設立を予定されていた右会社の名義を使用して右会社取締役社長Kと記載したが、これには特に「八尾製作所事」と附記してあるのであつて右手形は実在しない旭サドル工業株式会社によつて振出されたものではなく、右組合の業務執行者であるKが組合を代表して振出したものであると認め、進んで次のように判示した。
「原告は右組合に対し本件手形による手形債権を有するものと認むべきであるところ、組合債務は総て組合財産をもつて弁済せられるのを本筋とし、組合員の個人財産から支弁せられるのは寧ろ異例に属し、組合財産が組合員の個人財産と離れて別に存在する特別財産(目的財産)であつて独立性ある特殊の共有である結果、組合財産に対し組合債務の履行を求める場合にも債権者は組合債権全額について執行を爲すことを得べきものであつて、組合債務は組合財産によつて弁済せられるのを本筋とし、組合員の個人財産から弁済せられるのは常態でないこと前記の如くである以上、原告の本訴請求も亦組合財産による弁済を求めんとするものであると解するを相当とする。」被告等乙丙丁戊に対して各自手形金二十万円及びこれに対する満期の翌日以降右完済まで法定利率による損害金の支拂を求める原告の請求は正当である。―と。